メンバー
A01:エピタキシャルヘテロ界面を用いた超軌道分裂の学理の確立と新機能創成
東京大学
大学院工学系研究科 電気系工学専攻
大矢 忍
A01班大矢グループでは、分子線エピタキシー(MBE)法により作製した超高品質単結晶からなる強磁性ペロブスカイト酸化物のヘテロ界面で、0.015~0.2 V程度の極低電圧を印加するだけで、磁化が90°回転する特異な現象が初めて観測されました[Anh, Ohya et al., Phys. Rev. Mater. 12, 041001 (2019).]。次世代の不揮発性メモリとして期待されている磁気ランダムアクセスメモリなどで利用されている従来の磁化反転方式と比べると、8桁程小さな電流密度で磁化が回転しています。本現象は、界面への電圧印加により分裂した軌道間を電子が遷移するという、従来の磁化の電界制御の研究では使われてこなかった新たな現象により誘起されていると考えられます。本グループでは、MBE法を用いて種々の高品質な単結晶ヘテロ界面を作製し、界面における「特異な軌道分裂」を人工的に制御することにより巨大応答(磁化・スピン・構造など)を開拓し、A01班、A02班およびA03班と協働することにより、このような新奇の物理現象を理解するともに、高効率のデバイスの実現に結びつく新たな機能性を生み出すことを目指します。
共同研究者:
Le Duc Anh, 東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻
A01:非平衡マルチフェロイックス界面の超軌道分裂による新奇巨大界面応答
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター /
名古屋大学国際高等研究機構
永沼 博
A01班永沼グループでは、2019年にRu/BiFeO3界面に強磁性的秩序が現れることを発見しています[J. Appl. Phys. 129, 034101 (2021)]。2020年には、作製した金属/BiFeO3界面に、極薄の非平衡のマルチフェロイック界面層が形成されていることが分かりました。この領域に0.1 Vの極低電圧を印加したところ、室温において60%もの大きな特異的な磁気モーメントの変化が観測されました。本グループでは、このような非平衡マルチフェロイックス界面層における巨大界面応答において、超軌道分裂が果たしている役割を、班間連携により高度な構造解析および理論解析を用いて理解し、極低電圧における『界面巨大応答の学理』を構築することを目標とします。最終的には、超電導量子干渉計の感度を上回る超磁場感度センサ素子の実現を目指します。本研究では、低電界駆動の物理機構を解明するためにA02班佐藤グループと協働し、電子顕微鏡を用いて結晶構造/電子構造を電界印加下で評価します。ここで得られた物理パラメーターを用いてA03班福島グループが行う第一原理計算の結果をもとに、より大きな応答性を有する界面構造を予測し、実現していきます。
A02:高確度その場電子顕微鏡法・分光法による超軌道分裂の学理構
熊本大学
半導体・デジタル研究教育機構
佐藤 幸生
A02班佐藤グループでは、(i) 「電場印加その場電子顕微鏡法」、(ii)「高確度走査透過型電子顕微鏡法(高確度STEM)」ならびに(iii) 「原子分解能電子エネルギー損失分光法(原子分解能EELS)」を独自技術により融合し、A01班大矢グループと永沼グループが作製した界面試料の原子配列・電子状態ならびにその電場応答を、原子スケールで直接観察します。測定データをA03班佐藤グループに提供し、データ同化第一原理計算により、新奇巨大界面応答の発現メカニズムの本質的な解明を目指します。得られた知見をA01班にフィードバックし、これら一連のプロセスを繰り返して超軌道分裂が巨大界面応答をもたらす学理を構築することを目標とします。
A03:酸化物ヘテロ界面における超軌道分裂の学理構築と巨大界面応答材料のスクリーニング
産業技術総合研究所
材料・化学領域 研究チーム長
福島 鉄也
A03班福島グループでは、データ駆動型マテリアルデザインの手法を、酸化物ヘテロ構造材料とブラウンミレライト構造を有するマルチフェロイックス材料に適用し、(1)外場と界面構造が誘起する超軌道分裂と巨大秩序応答機構の学理構築、(2)高効率界面材料のハイスループットスクリーニング、(3)データ同化(計算と実験の協奏)を用いた電子顕微鏡計測の原子位置・配置の推定、(4)機械学習による超巨大物性応答を実現するバンド構造の予測を推進します。領域内の緊密な共同研究体制のもと、得られた学理とデザイン結果をA01・A02班にフィードバックし、酸化物ヘテロ構造界面における新学術分野の開拓に貢献したいと考えています。
共同研究者:
新屋 ひかり, 東京大学大学院工学系研究科スピントロニクス学術連携研究教育センター
領域アドバイザー
・日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター センター長
東北大学 名誉教授
高梨 弘毅
・東北大学電気通信研究所 教授
白井 正文